名峰「薬師岳」を目指す山旅
登山者の聖地である日本アルプス。スターの山々が集う北アルプスは、特に人気の山域だ。北アルプスには、表銀座・裏銀座・穂高連峰・立山連峰・後立山連峰などさまざまなコースがあるが、中でも私が愛してやまないのが黒部源流部の山々だ。
表銀座や穂高、立山連峰のような煌びやかさはないが、北アルプスの中でも最奥部にある黒部源流の山々を登っていると、その奥深さから「私は今、山にいるんだ」と実感できる。数日かけて歩かねば辿り着けないといった秘境感も魅力だ。
私が黒部源流部の山々に虜になったきっかけは「黒部五郎岳」だ。テレビで初めて見た瞬間、そのなんともたくましい男前な姿に一目惚れしてしまった。以来、いつかは登りたいと憧れを抱き続け、数年前に登頂してからは以前にも増して黒部五郎岳への愛が強くなった。それと同時に、黒部五郎岳の周辺には鷲羽岳や水晶岳など魅力あふれる山々があることを知り、今では黒部源流部が最も好きな山域となっている。
360度どこを見渡しても山に囲まれている黒部源流部は日常から切り離された別世界であり、まさに非日常を味わえる場所なのだ。下界の音は一切聞こえない。黒部源流部の山々のたおやかな山容を眺めていると心が穏やかになり、ただただ景色に見惚れてしまう。
立山連峰を代表する名峰「薬師岳」
今回訪れた薬師岳は、黒部源流のそばにあるが立山連峰を代表する名峰だ。黒部源流の山々を縦走した時に初めて薬師岳を見て、そのどっしりとした山容と存在感に圧倒された。「薬師岳の山頂から黒部源流部の山並みを見てみたい」。そう思ってから幾度となく計画を立てたものの、台風や悪天候により計画が流れ、今回やっとの思いで決行することができた。
久しぶりに泊まる薬師峠キャンプ場の正面には、お気に入りの黒部五郎岳が見える。テントを設営した後、疲労した足をストレッチしながら明日の薬師岳登頂に備える。気付けば数年越しとなってしまった薬師岳に胸が躍る。
使用テント:bonfus (ボンフェス) /middus 2p (マイダス2P)/ camo (カモ柄)
3ヶ月ぶりのアルプス登山だったが、今回のテントは軽量なボンフェスのマイダス2Pだったため、体への負担を軽減できたことは大きい。山岳テントには珍しいおしゃれなカモ柄がテント場でも目立つ。10月初旬ともなると夜の気温は氷点下。夜中に「寒い」といった声が周囲から聞こえてきたが、マイダスは風をしっかり防いでくれるため、朝までぐっすりと眠ることができた。
翌朝も絶好の登山日和となった。ついに薬師岳の山頂に立てるという喜びで、前日の疲れは吹っ飛んだように足取り軽く登っていく。稜線に出てからは終始絶景で、なかなか前に進まない。やっと到着した山頂は、とてもすっきりとしていた。
薬師岳は、その名前の由来にもなっている薬師如来の浄土として信仰されてきた山である。そのため、本来であれば薬師岳山頂には薬師如来を祀った祠があるのだが、ちょうど建て替えのタイミングと重なり、薬師如来像は太郎平小屋に移動されていた。
薬師岳は、「北カール」「金作谷カール」「中央カール」「南陵カール」の4つのカールを有している。中でも山頂から見る「金作谷カール」は優美で、北アルプスの貴婦人と称される薬師岳に相応しい。
今回は、薬師如来像に会えず少し残念な気持ちになったが、山頂からは剱岳・立山をはじめとする北アルプスの山々、乗鞍岳、御嶽山が一望できた。「あれ、富士山じゃない?!」と山頂で盛り上がるほど絶好の天気に恵まれ、大満足の山行となった。次回は、新しい薬師如来の祠を楽しみに登りたい。
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文章:レベッカ